熊谷市立熊谷図書館所蔵資料

1.蓮生山熊谷寺開創略縁起(江戸時代:22.8×16.5cm)

 蓮生山熊谷寺の開創に関する縁起。蓮生法師が自分の所領であった熊谷郷にある館の大手に念仏庵を建てたことに始まり、その後法灯を伝えながら、天文年間に幡随意上人の中興、そして江戸期にいたるまでの、熊谷寺に関する寺歴および寺宝について書かれている。熊谷市立熊谷図書館蔵。

蓮生山熊谷寺開創略縁起 熊谷市立熊谷図書館蔵

2.新編武蔵風土記稿(江戸時代:22.7×15.7cm)

 徳川幕府編さんの武蔵国の地誌。当時の大学頭であった林述斎を総裁として41名で編さんした。沿革や任国表、郡誌、村誌をのせた計266巻からなる書物。文化7年(1828)までかかり、天保元年(1830)に幕府に上呈した。その後、明治17年に冑山村(現熊谷市)の根岸武香が版を起こし、80冊にまとめて版本として出版した。江戸時代の文化・文政期の状況を知る書物として、また各村の成り立ちや支配者の変遷を知る手がかりとして貴重な資料である。熊谷市立熊谷図書館蔵。

新編武蔵風土記稿 熊谷市立熊谷図書館蔵

3.直実挙扇の図(江戸時代:122.8×58.2cm)

 渡辺崋山筆の熊谷市指定文化財。紙本淡彩。一ノ谷の合戦において、直実が扇を広げて平敦盛を呼び戻す場面で、直実に焦点を合わせて描いた図。中央に馬上の直実を配し、上下の広がりを十分に生かしている。大胆な余白が馬上の直実を一層際立たせ、朱と群青と黄土の配色の妙が、画面に躍動感を与えている。崋山自身が戯画と称するように、自由な雅楓で描かれている。熊谷市立熊谷図書館蔵。

直実挙扇の図 熊谷市立熊谷図書館蔵

4.熊谷蓮生一代記(江戸時代:22.3×15.5cm)

 熊谷次郎直実・法力坊蓮生法師の生涯を記した一代記。文化8年(1811)刊行。全7巻。挿絵入りで、江戸時代後期に成立した「読み本」風の体裁をもつ。序文に文化6年「法然寺五十九世厭誉」、文化7年「葛原斎仲通」とある。庶民教化を標榜しつつも、娯楽的要素も取り入れた作品となっている。その内容のほとんどは、寛永3年(1750)成立の「迎接記文針芥鈔」により、勧化本の影響が濃い。また京都・法然寺に関する記述もあり、同寺所蔵の「開基熊谷山直実入道蓮生上人一代略画伝」「蓮生法師伝」と密接な関係がることも指摘され、その制作年代から蓮生六百遠忌という宗教行事を背景として制作されたと考えられている。熊谷市立熊谷図書館蔵。

熊谷蓮生一代記 熊谷市立熊谷図書館蔵

5.新板絵入平家物語(江戸時代:26.5×19.5cm)

 「平家物語」は、治承4年(1180)から元暦元年(1184)に起こった源平合戦の描写を軸に、平家一門の興隆と滅亡とを、仏教的な無常観を背景に描いた戦記文学。全12巻。読み本系、語り本系などの諸系統があり、それぞれの系統に諸本が伝わり今日に至っている。第9巻に「敦盛最後」として、熊谷次郎直実が平敦盛を討つ場面が描かれているが、諸本によってその描き方にも相違がある。江戸時代には版本となって流布し、これを下敷きに浄瑠璃・歌舞伎の題材として「熊谷陣屋」などの演目が創られるようになった。熊谷市立熊谷図書館蔵。

新板絵入平家物語 熊谷市立熊谷図書館蔵

6.黒谷法然上人一代記(江戸時代:26.4×19.3cm)

 浄土宗の開祖、法然房源空の事跡については、国宝「法然上人行状絵図」48巻を含め、数多くの絵巻、書物にまとめられているが、本書は寛文6年(1666)に発刊されたもの。「法然上人行状絵図」などに取材し、記述されている。蓮生法師との関連は、第6巻に「武蔵の国熊谷入道の事」という章立てで、出会いから出家、往生に至るまでの一連の経緯が書かれている。熊谷市立熊谷図書館蔵。

黒谷法然上人一代記 熊谷市立熊谷図書館蔵

7.新富座筋書(源平躑躅)(明治時代:22.8×15.5cm)

 新富座は、江戸三座の一つ森田座の後進で、明治5年(1872)から大正12年(1923)まで、現在の東京都中央区新富町二丁目にあった。明治8年に焼失したが新築され、市川團十郎、尾上菊五郎、市川左団次らの名優を網羅し、新富座時代を築いた。その後、歌舞伎座開場後、松竹合名社に買収され、大正12年の関東大震災で焼失、その幕を閉じることとなった。この台本は、その新富座で演じられた「須磨都源平躑躅」の台本で、当時もこの演目の人気があったことを窺わせる。熊谷市立熊谷図書館蔵。

新富座筋書(源平躑躅) 熊谷市立熊谷図書館蔵

8.古状揃(江戸時代:26.0×18.0cm)

 古い書付・手紙を編集した往来物の一種。江戸時代の手習および歴史の教科書として用いられた。現存最古は、寛永2年(1625)の奥書本と考えられている。源義経の「腰越状」などといった、古来の有名な手紙などを収録しているが、熊谷直実関連では、直実が平敦盛を討ち取った後、敦盛の父親である平経盛に敦盛の首と共に送ったとされる「直実送状」と、それを受け取った経盛が直実に宛てた「経盛返状」が収録されている。この二通の手紙については、「平家物語」の読み本系の諸本などに収録されており、これを引用して手習いの参考にしたと考えられる。熊谷市立熊谷図書館蔵。

古状揃(熊谷送状) 熊谷市立熊谷図書館蔵